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「ホラー小説大全〔増補版〕」「カッティング・エッジ」を読んだ

風間賢二さんの「ホラー小説大全〔増補版〕」を読んだ。角川ホラー文庫で出版されたもの。角川選書から出版されたものに第三、四部(「スティーブンキングの影の下に」「サイコとエロ・グロ・スプラッタ」)を増補したもので、現在は双葉文庫から再販されている。この増補分は大変興味深いのでぜひ増補版を買うべきです。

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第一部は「西欧ホラー小説小史」と題して西欧(主にイギリスとアメリカ)におけるホラー小説の興りと背景について具体的な例を挙げながら紹介する。つづいて第二部では「近代が生んだ三大モンスター」フランケンシュタインの怪物、吸血鬼、狼男についてモダンホラーや映画についてふれながらその特徴を説明している。

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第三部、第四部ではスティーブン・キングの登場とそれ以降の所謂モダンホラー作家について多くの例を挙げながらいろいろなモードを紹介している。そして第五部では「究極のモダンホラーベスト100」として「悪魔」「いじめ」「SFホラー」などなどなど全部で100作品をまとめている。

巻末には主要参考文献まであり、ホラー小説、特にモダンホラーについて紹介したものは少ないのでとても貴重な本です。

ただ個人的にはつまるところモダンホラーとはスティーブン・キングであり、その次にクライヴ・バーカー(「血の本」)がある、以上!ということで良いのではないでしょうかと思う。各所から怒られそうではあるものの。

また、この本にも紹介されていたデニス・エチスンによるアンソロジーカッティング・エッジ」も読んだ。

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カッティング・エッジ」は四部に分かれた短編小説集で、ピーター・ストラウヴ「ブルー・ローズ」、ジョー・ホールドマン「怪物」、カール・エドワード・ワグナー「空隙」、W・H・パグマイア&ジェシカ・アマンダ・サーモンソン「蒼ざめた震える若者」、マーク・レイドロー「バラバラ殺人のためのBGM」、ロバート・ラン「さらば、闇の恋人」、チャールズ・L・グラント「向こう側」、スティーヴ・ラズニック・テム「いじめ」、ジョージ・クレイトン・ジョンスン「鍬を持つ男」、レス・ダニエルズ「やつらの目あては」、リチャード・クリスチャン・マシスン「吸血鬼」、チェルシー・クイン・ヤーブロ「とぎれる」、ウィリアム・ノーラン「最後の石」、ニコラス・ロイル「非関連性」、ラムジー・キャンベル「手」、レイ・ラッセル「鐘」、クライヴ・バーカー「魂のゆくえ」、ロバート・ブロック「死の収穫者」、エドワード・ブライアント「転移」、ホイットリー・ストリーバー「苦痛」の20話が収録されている。

このアンソロジーにまとめられた作品は超常現象やモンスターではなく、サイコホラーに近い雰囲気のものがほとんどであるのが珍しい。

この中ではやはりピーター・ストラウヴとクライヴ・バーカーが良い。ピーター・ストラウヴの「ブルー・ローズ」はまさにサイコホラー代表といった感があり、他方クライヴ・バーカーは全然そんなことない(笑)いつものバーカーです。バーカーについては機会を見て別で紹介したい。

ちなみにだが、「吸血鬼 Vampire」を書いているリチャード・クリスチャン・マシスンは三度にわたって映画化もされた「アイ・アム・レジェンド」を書いたリチャード・マシスンとは別人、というかその息子であるらしい。「アイ・アム・レジェンド I Am Legend」は以前には「地球最後の男」、そのまた昔には「吸血鬼」という邦訳であったので大変まぎらわしい。本書に収録されている「吸血鬼」は実験的な掌編である。

ホラー小説大全[増補版] (角川ホラー文庫)

ホラー小説大全[増補版] (角川ホラー文庫)

カッティング・エッジ (新潮文庫)

カッティング・エッジ (新潮文庫)