「アメリカ・インディアンはうたう」を読んだ
金関寿夫さんの月刊たくさんのふしぎ1986年9月号(第18号)「アメリカ・インディアンはうたう」を読んだ。
絵は堀内誠一さんです。堀内誠一さんはたくさんのふしぎ創刊号「いっぽんの鉛筆のむこうに 」にも参加しているほか、1987年6月号(通巻第27号)「音楽だいすき」の絵や1985年10月号(通巻第7号)「どうくつをたんけんする」も書いている。
この本は多くのすばらしい巻があるたくさんのふしぎの中でも特に気に入っている一冊だ。
まず金関さんによってネイティヴ・アメリカンの文化が大変すばらしく紹介されている。かれらがうたった歌を取り上げながら、かれらの考え方、生き方、世界の成り立ち、衣食住、多彩な工芸、子育て、子供たちを短くも丁寧に語っている。
この娘はつみます 野いばらを そのため この娘は生まれたの
この娘はつみます 野いちごを そのため この娘は生まれたの
この娘はつみます こけももを そのため この娘は生まれたの
この娘はつみます 野いばらを そのため この娘は生まれたの
加えてすばらしいのが堀内誠一さんの絵です。
堀内誠一さんのすごさについては僕が語りつくすすべもないが、タイポグラフィからレイアウト、文章、またときに応じて様々に画風を変える絵など一人で一から十まで雑誌が作れてしまうのではないかという多彩さである。
実際、たくさんのふしぎ創刊号では絵に加えてレイアウトも担当したことが記されている。
あざやかでのびやかなイラストから表紙にもみられる記号的な絵、はたまたフィールドワークのスケッチのようなものから緻密な工芸品の描写などなどなど、ここで紹介しきれないほど様々な絵が一冊一ページに書き込まれている。
ここでは本文とは別に細かなキャプションをあえて手書きの字のまま残してある。
金関さんによる細やかな文化の紹介と相まって一冊に良くまとまっていながら飽きさせないつくりになっている。
僕はこうした細々と書き込まれた一面を見ると幸せになるたちなので、ずずーっと時間が過ぎてしまうようです。
考えすぎかもしれませんが堀内さんが関わっていた色々な雑誌の一面にも通じるところがあるように感じられます。裏見返しには各地域に住むいろいろな部族が記されたアメリカの地図が描かれていてこれなども堀内さんの旅行記事にも見られるセンスの塊です。
この号はたくさんのふしぎ傑作集として単行本化もされているので、今は絶版ではありますが是非探して読んでみて下さい。
最後に雑誌のみのふろくとして付されている「ふしぎ新聞」四頁も個人的な楽しみのひとつなのだが、本号のふろくである川原田徹さんの「子どもたちのかぼちゃ浄土」という絵もとてもよかった。
川原田徹さんは雑誌たくさんのふしぎで種村季弘さんの1989年1月号「迷宮へどうぞ」の絵を描かれているほか、1991年6月号「かぼちゃ人類学入門」というとてつもなく面白い号を書いています。