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「空想観光 カボチャドキヤ」を読んだ

トーナス・カボチャラダムスさんの「空想観光 カボチャドキヤ」を読んだ。

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カボチャドキヤ王国*1のトーナス・カボチャラダムス大王自身の手によって王国の名所を紹介した本である。

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川原田徹さんことトーナス・カボチャラダムスは北九州は門司港に住む画家でもあり、本書にはその銅版画に加えてご本人による解説?が加えられている。

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カボチャドキヤは門司の町と不思議な並行性を有していてカボチャドキヤの玄関口である門司港駅は上のような「パンプキン(カボチャ)様式」の建物である。

駅舎はゆがみ傾いているが一緒に描かれている人々は皆生き生きとしている。

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これも奇妙な「かぼちゃ人間」。関門生命科学研究所が研究する新人間。

カボチャラダムスさんが描くカボチャドキヤは奇妙にゆがんだ悪夢のようにも見える。しかし付された文章を読んでいくとそれが決してそうではないことがわかる。

カボチャドキヤは理想郷だ。もしかすれば過去の、いやしかし現実の門司と地続きの理想郷である。

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しかも理想郷なればこそ主役はそこに暮らす人たちだ。人々はひしめき合いながらも食べ働き楽しみ暮らしている。

銅版画は何れも緻密で素晴らしく描かれたカボチャドキヤの風物も大変面白い。

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それに加えて本書の魅力はなんといってもカボチャラダムスさんによる文章だ。新聞の連載であったそうだが、自由闊達、変幻自在な文章でとても面白い。

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これが他に類を見ないカボチャドキヤの大発明「人糞発電所」である*2。働く人のためにうどん屋も併設されている。

理想郷の多くは「現実の否定」をその本意とするが、カボチャドキヤはただそれそのものが礼賛されているからすばらしい。

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全部で29の名所が紹介されています。おすすめです*3

実はこのカボチャドキヤ、訪問することができます。

kitakyushu-guide.sun.bindcloud.jp

門司にはトーナス・カボチャラダムスさんが館長を務める「カボチャドキヤ国立美術館」があります。ぜひ訪ねたい!

残念ながら2022年5月5日に閉館するつもりだそうですので機会がある方はお早くカボチャドキヤへ向かいましょう。

*1:種村季弘さんによる序文では「カボチャラダ王国」と記されている。

*2:文中の「中村博士」とは、「うんこ博士」こと中村浩さん。

*3:ここで紹介しておすすめでなかったためしはないが。