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「火星の土方歳三」「金星のZ旗」を読んだ

吉岡平さんの「火星の土方歳三」と「金星のZ旗」(ソノラマ文庫1034と1045)を読んだ。

カバーと本文のイラストは末弥純さん。

まず最初に言うべきこととして、僕はエドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」は恥ずかしながら未読である。しかし未読であるからこそ、未読であっても、いや未読だからこそ楽しめる作品だと断言できる。

「火星の土方歳三」のあらすじは、2004年の発刊当時にそのような言葉が妥当であったかは分からないが「異世界転生もの」にあたる*1

しかも、あの新選組土方歳三がバローズの火星世界へ転生する。これが面白くないはずがない。この「火星世界」バルスームは戦神マルスの名に恥じず戦いに満ちており、四本腕の異形である緑色人や十本足の恐るべき火星獅子バンス、六本足の大白猿などなどトールキンのファンタジー世界などとも全く異なるスリリングな世界である。そんな中で土方歳三が剣をふるって冒険するとなれば、元の「火星シリーズ」を知らずとも胸が高鳴るというもの。

日本においてバローズの「火星のプリンセス」と言えば、武部本一郎さんの装画が欠かせないが、末弥純さんの描く美女もまたそれに勝るとも劣らない素晴らしい雰囲気。

同じ2004年に刊行された「金星のZ旗」の表紙では、陸上の(!)戦艦の前に毅然として立つ火星の美姫が描かれていて、構図といい、とても印象深い。

「金星のZ旗」は「火星の土方歳三」の正式な続編である。ただし、舞台は金星コスーム、主人公は土方によって招かれた艦隊参謀・秋山真之。こちらも秋山真之が火星とも異なる未知の世界、金星で冒険を繰り広げるのだが、武闘派の土方歳三とはまた違った展開を見せるのが面白い。序盤、前作には現れなかった、あの「ドタール・ソジャット」も登場する。

土方と違ってさほど武勇にすぐれるわけでもない秋山が両手に美女と、なぜかしらモテるというのも異世界ものらしい。そして、最後……故郷への途についた秋山に訪れる驚愕の結末(笑)。

後半、露骨な社会風刺のやり取りが唐突に続く場面があり水を差された気持ちになったが、「あとがき」によればそれも「金星シリーズのパロディ」としてわざと書かれたものであることが説明されている。

最後に「火星の土方歳三」の14章は「燃えよ剣、ふたたび」、「金星のZ旗」の第三部は「坂の上の二重雲」であるあたりから、「火星・金星シリーズ」だけのパロディでないことは明白だろう。

単なるパロディであるに留まらず、これら自身が非常に面白く、また読後には元になった「火星シリーズ」を読みたくなること請け合いの二作だった。

*1:肉体は地球に残されているとも言われているし、「金星のZ旗」の秋山真之土方歳三に「招かれた」とあるので「異世界召喚」なのかもしれず、正確には「転生」ではないかもしれない。