「吸血鬼のおはなし」を読んだ
八百板洋子さんの月刊たくさんのふしぎ2009年3月号(第288号)「吸血鬼のおはなし」を読んだ。
東欧の昔話から「青い炎の館」「ぶよぶよの吸血鬼」「吸血鬼に恋した娘」「九人の兄と妹」「月光の歌」の5つの吸血鬼の話を紹介している。
しかし、ここに登場する吸血鬼は血を吸わない。「ぶよぶよの吸血鬼」では、人型ですらない。
「吸血鬼」なのに「血を吸わない」ということはあり得るのか?と思うかもしれないが、ここで取り上げられる民話では「吸血鬼」がいかに生まれ、なにをなしたかが重要である。
しかしこうして読んでみると「吸血鬼」の物語とはようするに「人」の物語なのだと実感する。八百板洋子さんはさらに吸血鬼のお話はどれも「愛のお話」ではないか、と書いている(ふしぎ新聞の作者のことばより)。
それにしても、「吸血鬼」というポピュラーなキャラクターを題材としながら、実際には民話の世界の多様さと奥深さを伝えて民俗学にまで近づこうとは……「たくさんのふしぎ」、さすがである。
この本のもう一つの魅力はもちろん齋藤芽生さんの絵である。
これがとんでもなく美麗で題材もとても画風に合っていてどの絵も大変に素晴らしい。
お話ごとに基調となる色を変えていて、文章の背景だけでなく絵の色調もそれに合わせたデザインになっている。この絵だけでも手に入れて読む価値がある。
これが700円で売られていたとは……信じがたい。
前回に引き続き吸血鬼の本でした。
最後に、「たくさんのふしぎ」と言えば下記のブログを是非読まれたし。