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「恐竜クライシス」を読んだ

ハリー・アダム・ナイトの「恐竜クライシス」を読んだ。

イギリスの田舎町に恐竜があらわれ人々を襲いはじめる、という恐竜パニック小説です。

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恐竜パニックと言えばマイケル・クライトンの「ジュラシック・パーク」を誰もが思い出すところですが、訳者である尾ノ上浩司さんによる本書の解説「亜流を踏み越え、恐竜パニック小説の真打ちが出現する!」によれば「本書の方が数年早く出版され」ていたらしい。

内容よりまずこの解説が実に熱い調子で楽しい。「ジュラシック・パーク」を「二番煎じはあっちの方」と語り「幻の傑作恐竜パニック小説」である本書を「痛快娯楽小説の王道をいく一冊」と書いている。

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では内容はと言えば、読むと「ジュラシック・パーク」と比べる気は一瞬で消え失せるだろう。なぜなら本書はB級ホラー映画そのものだからだ。主人公やヒロインのキャラクター、話の展開、その結末まで、徹頭徹尾B級ホラーのそれなのです。例えば主人公である記者デヴィッド・パスカルは身の丈に合わない野心を持った自己中心的な青年でそのくせワルにもなりきれない半端な人物。また、ある意味彼の利己的な行動が町全体を巻き込むパニックを引き起こしたとさえ言える。

ただ、であるからこそ、ホラー好きにはたまらない。B級ホラー映画を楽しむように本書を楽しめばよいのだ。生命倫理?科学の暴走?そんなことは知らん!肉食恐竜が人を襲いまくる、それだけだ!

名作でないからこそホラー小説としては「傑作」たりうるのかもしれない。

amabiee.hatenablog.com

本書は風間賢二さんの「ホラー小説大全〔増補版〕」で紹介されていたので購入した。

ところで本書の中盤(13章)でダレン・ペンワード卿が恐竜を現代に蘇らせた理由を語る大演説が大変すばらしい。マッドサイエンティストの鏡。この点においては「ジュラシック・パーク」のジョン・ハモンドにも大勝利と言えよう。